むずかしい「うつ」の診断に世界初の快挙
うつ病の症状かどうかを血液の遺伝子に起こる化学反応を用いて客観的に診断する方法を、
広島大学大学院の研究グループが
世界で初めて発見したと30日に発表した。研究成果はアメリカの科学誌「
ブロスワン電子版」に掲載されている。
血液検査によってうつが「数値可」
未治療のうつ病患者とうつ病ではない人の血液を解析した結果、うつ病の患者には脳内に多く存在するたんぱく質を作る遺伝子に起こる「
メチル化」という
化学反応に特有のパターンが見つかった。この血液検査が実用化できれば、費用は1万5千円程度で、
採血から2日間でほぼ確実な診断結果が出るという。
「うつ」の診断は医師でも難しい現状
現在、
うつ病は客観的な診断基準がない。精神科医が
患者の症状やヒアリングをもとに病名を主観的に判断する方法が主流であり、医師によって診断が異なることも多い。
うつ病や躁うつ病などの診断の違いによって、処方される薬も異なるため、
完治まで非常に長い時間かかる場合があったり、
経過観察中に異なる気分障害の診断がおりることも少なくない。
「こころの定期健診」があたりまえの世の中になるか
今や、
日本人の3人に1人がうつの症状を持つといわれている。
心療内科や精神科受診などに抵抗があったり、企業や自治体による定期健診などの機会もないため、はっきりとした
自覚症状がないまま、病状を進めてしまう人も多い。まさに「
こころの風邪」なのである。
今回の発見により、今まで困難であった客観的な診断方法の研究がさらに進み、
発症を未然にふさいだり、自殺の早期予防や新薬の開発にもつながるのではないかと期待されている。
DNA Methylation Profiles of the Brain-Derived Neurotrophic Factor (BDNF) Gene as a Potent Diagnostic Biomarker in Major Depression -PLoS ONE-
広島大学ホームページ「うつ病医療への提言-4」余裕持てる社会の仕組みを今回の研究グループ:山脇成人教授(精神神経医科学)による提言記事