メスを渡すのは衛生検査技師の卵
全国で深刻な人員不足が伝えられる看護師について、毎日新聞が驚くような現状を特集した。
場面は1つの病院から始まる。埼玉県日高市にある埼玉医科大国際医療センターでは、22歳の女性スタッフが手術中の医師に電気メスを渡す。これは、「器械出し」と呼ばれる仕事にあたる。
「器械出し」の仕事には、手術の手順や器具に対する知識が必要であり、従来は看護師が務めるものとされていた。けれども女性スタッフは看護師ではない。彼女は「衛生検査技師」の卵である。
限界にきている看護師不足への対処のため、同センターでは技師の卵2人を採用し、およそ2か月の教育期間を経て6月ごろより「器械出し」として独り立ちとなった。その成果もあり、昨年度は約5,300件に留まった手術件数が、本年は稼働率が上がって5,700件を上回る見通しであるという。
※ 画像はイメージ
違法か適法か
こうした現状に対し、手術室看護師を約20年務めた経験を持つ、信州大医学部の深澤佳代子教授が、全国の大学病院など約130施設を調査した結果、手術室の看護師が平均で5~6人不足しているという現実が明らかとなった。このような実情においては、国際医療センターのような試みも、「やむを得ない」と深澤教授は認識する。
実際、静岡県の静岡がんセンターや、埼玉県の埼玉医大では、増加する患者に対して計画通りに病床を増やせないという事態に直面している。
ただし、保健師助産師看護師法では、看護師以外の人が「診療の補助」をしてはならないとしており、複数の学会においても「違法では」との声もあるという。こうした現況に対し、厚生労働省看護課は「器械出しが診療の補助にあたるかは一概に判断できない」との認識を示した。
編集部 宗近 明

毎日新聞:
『明日へのカルテ:第3部・看護師不足の現場から/2 メス渡す技師の卵』
http://mainichi.jp/select/science/news/20101221ddm002040064000c.html