偶然が重なって…
1941年の4月、まだ若いマリー・バークリンさんは、桜を見るために、ワシントンのタイダルベイスンの周辺を散歩していました。アメリカ、ワシントン州にあるタイダルベイスンの近くには、桜並木で有名な公園があります。
ワシントンポストに勤めるカメラマンも、ちょうどその場に居合わせたため、翌日、マリーさんの顔は新聞に載りました。彼女の顔は繊細な桜の花に縁取られていました。
1962年の4月、3歳のマリー・アイラーちゃんも両親とともに花見へと連れてこられました。そこにも、たまたまワシントンポストのカメラマンが居合わせ、翌日、このマリーちゃんの顔が新聞に載りました。
先週、3歳のブレアンナ・スポーンちゃんも桜を見に連れてこられました。たまたま居合わせたワシントンポストのカメラマンが…と、ここでストップ。
カメラマンはたまたまそこに居合わせていたわけではないかもしれませんね。
実は、ブレアンナちゃんのお母さんは…
「これは私の母親の夢だったんです。私が娘を産んで、その子がカメラマンの目に止まることがね。」
桜の木の横で、そう話すのは、ブレアンナちゃんのお母さん。
ブレアンナちゃんのお母さんは、1962年に写真を撮られたマリーさんです。そして、このマリーさんの母親は、1941年に写真を撮られたマリー・バークリンさん。
結婚して名字がみんな変わっていますが、3代そろって、ワシントンポストのカメラマンに写真を撮ってもらった女の子たちです。
マリー・アイラー・スポーンさんは、ハットトリックをねらっていました。そしてそのチャンスを見事逃しませんでした。
「逃さないわ、絶対に。」
と、彼女は言います。
「見てよ、この人!」
彼女とカメラマンが出くわしたのは、タイダルベイスンへと向かう途中の第2次世界大戦記念碑の周辺です。昔の写真は額に入れられ、ブレアンナちゃんのベビーカーのエアクッションに積まれていました。歩道は花見客でごった返しています。
今年1月、マリーさんはワシントンポストの編集長に、偶然ながら、彼女の家系で伝統となっている出来事を書きつづった手紙を送っていました。
「どこから始めるべきかよくわかってました。」
と、彼女は話します。
「取材は適切な人が選ばれていると分かっていたので。」
先月31日、マリーさんは家族を連れて、住居のあるフロリダから、この場所へと飛行機に乗ってやってきました。
彼女の夫リックさんと、2人の5歳になる息子のブランドン君は、レンタカーに乗り込みました。桜のこの季節、駐車スペースを確保するのも一苦労です。それからブレアンナちゃんをつれて、キレイに桜が咲いている場所を探しました。
「どっちにしろ、うちの家族はみんな来るつもりでした。」
と、マリーさんは言います。だれかがブレアンナちゃんの写真を撮り、ニュースに掲載してくれることに執着していた訳ではないと話します。
遠く離れてもひきつけられる場所
マリーさんが高校2年生のころ、彼女の父親がフロリダへ移りたいと希望し、一家は引っ越ししました。
マリーさんが高校を卒業する1977年まで待つこともできましたが、両親はマリーさんにフロリダの大学へ進学してほしいと望んでいました。
そのために、現地の高校を卒業する方が良いと考えていたのです。両親の計画は大成功でした。彼女はフロリダ大学へ進学し、それだけでなく、大学で現在の夫とも出会いました。
マリーさん一家は、現在フロリダのパーム・ビーチ・ガーデンに住んでいます。そこでマリーさんは幼稚園の先生として働き、夫のリックさんは海上輸送の仕事に就いています。マリーさんの父親が亡くなったのは2001年のこと。母親も去年の夏に亡くなりました。
「彼女はここで生まれ、ここで育ちました。」
と、母親についてマリーさんは話します。
「ワシントン市民であることを、いつも強く誇りに思っていました。」
彼女の母親はジョージワシントン大学へ進学し、米国議会図書館を、定番の論文を書く場所としていました。
マリーさんがワシントンから離れてしばらくたちます。あともう少しで、ここで過ごした時間より、離れて暮らした時間の方が長くなりそうです。しかし、彼女はまだこの町からひきつけられるものを感じるそうです。その力が彼女をここまで家族を連れてこさせました。
ほかのたくさんの親がしているように、マリーさんは自分の娘に、桜の木のそばでポーズをとらせました。そして、ワシントンポストのカメラマンが、その姿を収めたのです。
そのカメラマンは、次の世代が生まれたら教えてくれと話したそうです。
もしこれから30年後も新聞が存在し続けて、ワシントンポストがその中の1つとして残り、一般人の記事を書く記者がまだいたとして、その記者があなたでも、ブレアンナという女性がドアをノックした時、驚いてはいけません。
A lovely family tree among the cherry blossoms
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2010/04/04/AR2010040402700.html