適応と進化を説いたチャールズ・ダーウィンの遺伝研究では、動物、植物ともに、交雑と近親交配の影響力を調べる実験がたくさん行われています。近親交配の実験では、しばしば、弱く、病弱な子孫が生まれました。
自身の子供にも研究対象と同様の危険性
皮肉なことに、彼自身の血統と結婚も、実験と呼ぶことができたのかもしれません。
29歳でダーウィンはいとこのエマ・ウェッジウッドにプロポーズします。エマは、彼の母親の兄弟の娘です。ダーウィンは近親交配の危険性を意識しており、自分と自分の妻の近い遺伝子関係によって、子供の健康を損なう影響が現れることを懸念しました。
ダーウィンの子は10人で、そのうち3人が、11歳になる前にこの世を去っています。友人へあてた手紙の中に、彼は子供に対して抱く自分の懸念を、「あの子たちは身体は強くない」と書きつづっています。
ダーウィン家とウェッジウッド家
ダーウィンがいとこと結婚したことは、単なる2血統の交わりではありません。ダーウィン家とウェッジウッド家が、実際に、近い家柄であったことを示す証拠が幾つかあり、今月3日にBioScienceによってオンラインで発表された新しい分析によれば、ダーウィンが当時懸念していた子孫の健康状態は、現代の科学でも的を射ているものだったようです。
アメリカ、オハイオ州マンスフィールドのオハイオ州立大学で、進化生物学、生態学、生物学の教べんを執る名誉教授ティム・ベラによって行われたこの分析は、ダーウィンの子供たちが、「中程度の近親交配」の特徴を持ち合わせていたことを突き止めました。
また、家族の子供たちの間には、「とても高い死と近親交配の関連性」があったそうです。
劣性因子と近親交配
2つの個体が結びつくと、両親の遺伝子情報は、子孫へと受け継がれます。そのため、片方の親に劣性の特徴があったとしても、通常はもう片方の親がより健康的な因子を持っているものです。この点は、実際に子孫を見れば一目りょう然です。
しかし、両親が双方とも劣性の対立遺伝子を持ち合わせていた場合、子孫が悪い遺伝子のみ持ち合わせて生まれてくる可能性が高くなります。
両親が共に劣性遺伝子を持ち合わせているという状況は、似た遺伝子を持ち合わせているときに起こりやすく、つまり、近親交配のことを指します。
後編へ続く…
原文: Charles Darwin's family tree tangled with inbreeding, early death (Scientific American)
http://www.scientificamerican.com/blog/post.cfm?id=charles-darwins-family-tree-tangled-2010-05-03BioScience 2010 Online (英語)
http://www.aibs.org/bioscience/bioscience_online_2010.html