米国内で初の試み
米国マサチューセッツ州で一月下旬、新たな条例が施行された。州内の幼稚園および保育園での歯みがきが義務化されたのだ。これに対し、保護者や保育者からさまざまな声が上がっている。
義務化されたのは、保育時間中に食事が含まれる場合、および保育時間が四時間以上に及ぶ場合で、従来の保育活動の中に歯みがきタイムが新たに加わる。
未就園児に対する歯みがきの行政指導に踏み切るのは、米国内では同州が初めて。
保護者の視点、政府の視点
ある保育園で保育士をしている女性は、自身も四ヶ月の赤ちゃんを持つ身であることから、この条例には賛成できかねている。「自分の子供の口の中に他人が手を入れるなんてイヤよ。政府が口を出すことではないわ」と女性は言う。
ブログにも、政府の過介入を批判する書き込みが多くあったようだ。「親の仕事なんだから、日常生活の細かいことにまで政府が口を出さないでほしい。子供なんて、洗面台に手も届かないのに」とある母親はブログ内で語っている。
だが州の幼児教育保育部部長、シェリル・キリンズ氏によると、保護者がどうしても抵抗を感じる場合は、歯みがきをしないよう申し入れることもできるようだ。幼児教育保育部は、州内の幼稚園および保育園を監督する部署で、虫歯予防の観点から今回の条例を制定した。2003年度の調査によると、マサチューセッツ内の幼稚園児のうち四人に一人は虫歯があるという。
「歯みがき不足が痛みや感染症、もしくはもっとひどい状態を引き起こすのなら、お粗末な歯みがきは子供にまん延する慢性病そのものと言えるでしょう」とキリンズ氏。
保育者のための研修施設
ボストンから約60kmほど北上したところに、基礎学習開発センターがある。ここでは、条例が施行された後に生じるトラブルに備えて、一月上旬からスタッフが研修を受けている。
同センターでは、赤ちゃんのゴム人形での歯みがきに毛の柔らかいブラシを用い、ハミガキには子供が飲み込んでも害のない、2006年の歯みがき指導プログラムで使用されたハミガキを使用している。
理事長のデボラー・ラモス氏によると、保育者たちは多少の不安を抱えながらも食後の歯みがきをなんとかこなしているようだ。
また歯周治療専門医でありマサチューセッツ歯科学会会長を務めているデイビッド・サミュエル氏は、保育者が子どもたちに正しい磨き方を覚えさせることが、今回の条例に効果が出るかどうかの鍵を握ると語っている。一方で同氏は、歯ブラシやうがいを介して雑菌が広がることも懸念しているようだ。
さらに、実際の保育現場からも、何十人もの子ども達に一斉に歯みがきをさせるために、現場の保育士は自分たちの休憩時間や食事時間を削っており、大変な思いをしているという声も上がっている。
(編集部 小川優子)
Preschools Add Brush-and-Spit to Day