著者の死と代表作
アメリカの小説家J.D.サリンジャーが27日、この世を去りました。91歳、ニューハンプシャー州の自宅でのことでした。死因は老衰だといわれています。
J.D.サリンジャーを語る上で、まず欠かせないのは代表作「ライ麦畑でつかまえて」です。無垢なものを描き出すその作品は、1951年の出版当時、文学界に衝撃を与え、一大旋風を巻き起こしました。その後、世界各国で翻訳され、アメリカでは小学校の授業で必ず登場する教材のひとつにもなりました。
「ライ麦畑でつかまえて」の影響力は、計り知れません。日本では少し前に村上春樹さんが新たに新訳で書き起こすなどして話題を集めました。また、アニメ「攻殻機動隊」などの他ジャンルの作品にも、彼の作品が題材として引用されています。
彼の人生
一方で、彼の人生は謎に包まれています。ユダヤ系の家系に生まれ、「ライ麦畑でつかまえて」の発表を行う前にはアメリカ軍にいた経歴もあります。作品が注目を集め始めると、田舎へと移り住み、宛ら世捨て人のような生活を送るようになっていたそうです。
彼は、自分の作品に対してもこだわりが強く、「ライ麦畑でつかまえて」の続編は作らないと決めていたそうです。実際に、そのことに関して訴訟まで起こしています。また、村上春樹さんが訳書に訳者解説を付けることを許可しなかったという話もあります。
彼の家族
J.D.サリンジャーは、戦争中、フランス人の女医シルヴィアと出会い結婚しています。この結婚は彼が軍を去り、名作を残すきっかけとなりました。しかし、彼女との結婚生活は1年ほどで幕を閉じています。
その10年ほどあとに、大学でクレア・ダグラスと再婚し、息子と娘を1人ずつ授かります。この頃には執筆活動に専念し、自宅にこもりっぱなしになっていたようです。彼の長男はマット・サリンジャーといい、俳優として活躍しています。
サリンジャーの家系
J.D.サリンジャー個人の家系図を辿ることは難しいのですが、サリンジャーという姓はそれほど珍しくありません。例えば彼以外に、オーケストラ指揮者や女優、政治家などに同じ姓を持つ有名な人物がいます。
家系図作成で、まず欠かせないポイントとなるのは、姓の由来を考えることです。サリンジャーという名前の記録を辿った調書があるのでご紹介します。
サリンジャーの歴史
サリンジャーは古代ノルマン系の名前で、1066年のノルマン征服の際にイギリスへとやってきました。由来はイギリスの聖人レジャーからと言われています。
アングロノルマン系の名前は、様々な綴りの種類があることでも有名です。ノルマン人が11世紀にイギリスを征服した際、新しい言語も持ち込まれ、それまできっちりと綴りを持っていなかった言語文化が変わったことがきっかけとなっています。それまでのイギリスでは筆記よりも口述の機会の方が多かったので、ひとつの言葉に対してあまりきっちりとした綴りが決められてなかったのです。
綴りを持たない古い言語は、やがて新しく持ち込まれた言語ルールにしたがって綴りが決められます。人の名前も同様です。発音に沿って様々な綴りが存在するようになります。サリンジャーの由来となる聖人レジャー「St. Leger」は、「Leger」になり、「Legere」になり、「Sallinger」になり、「Sallinger」になります。
そうしてサリンジャーの綴り「Salinger」が生まれたのです。まず最初に記録されている地はケント州で、ケント州には聖人ロジャーが統治したとされている地があります。こうやって徐々に数を増やしていったサリンジャー姓の子孫が、やがてアメリカの大陸へ渡り、偉大な小説家へと繋がったのでしょう。
Salinger Family Crest and Name History