心配される保険会社の「支払い能力」
東北関東大震災の被害規模が判明するにつれ、心配になってくるのが、保険金の支払いです。世界的にも例がない大規模災害だけに、生命保険や損害保険の請求額も過去最大のものになる見通し。米格付け会社ムーディーズでは、生命保険請求額が4000億円にのぼる、と試算しています。保険会社に支払い能力があるのか、不安視する声も高まっています。
支払いは世界中の保険会社が負担
大きな災害や事故の時に発生する多額の請求に対して、経営が危機に陥らないよう、保険会社は引き受けた保険の一部を他の保険会社に移転しています。この「再保険」は世界規模で利用されており、今回の震災でも、負担は世界中に分散されています。
世界最大の再保険会社ミュンヘン再保険では、今回の震災に関連して支払う保険金を約1700億円と試算。同じく世界第2位のスイス再保険は自社の支払いを約975億円と試算しています。
現状は安心? 不安要素も……
生命保険請求額の試算を出したムーディーズでは、各保険会社の格付け見直しを行ったものの、資本に対しては、今のところ影響は大きくないと見ています。
ミュンヘン再保険では、2011年の最終利益目標2700億円は達成できない、としている程度。スイス再保険では、2010年の最終利益を約700億円と発表。今回の支払額は1年分の利益を上回るが、経営について深刻なダメージを受けるにはいたりません。
世界的にリスクを分散させているため、被害の規模から想定されるほど、各保険会社のダメージは大きくありません。現状では、支払いに大きな支障が出ることはない、と見られています。ただ、いずれの試算も放射線による被害を算入していません。損害保険に加入していても、放射能汚染による被害についてはカバーされていないため、注意が必要です。
編集長 谷垣吉彦
◆ムーディーズ・ジャパン http://www.moodys.co.jp/pages/default.aspx◆ミュンヘン再保険 http://www.munichre.co.jp/group/index.php